chike0905の日記

何者かになりたい

輪読スライドを作ろう

概要

研究室で、論文などを輪読し、スライド発表する際に基礎となる点を雑記的にまとめておく。論文輪読でなくとも、スライドを作る一般的な時の注意点も含まれるが、頭の片隅においておくとよい。

なぜ論文輪読、スライド作成をするか

多くの人は、研究をするためのサーベイとして、論文を読むだろう。論文は何かしらの「問題」に対する「解法」を提示し、「解法が正しいことの証明(評価)」を述べた文章である。論文を書くためには、論文がどのように書かれた文章であるかを知るのがもっとも手早い。そのため論文を読む。

また、論文をスライドにまとめることで、論文に多く記載されている情報の中から、「核となるアイディア」を抜き出す、いわゆる抽象化を行うスキルを養うことができる。自分で論文を書く際も、「核となるアイディア」が効率的に読者に伝わるように書かなければならないし、良い論文はそれがわかりやすい文章体裁になっている。それらをうまく抽出できれば、自分で論文を書く際にも抽出されるであろう核の部分と、それを補助するような書き方で、論文を書き進めることができるようになることが期待できる。

スライド体裁編

ページ番号を振ろう

スライドにはどんなスライドであっても絶対にページ番号を振ることを忘れてはならない。ページ番号がなければ発表する際にはいいかもしれないが、発表後に議論をする際、「〜ページの図だけど〜」みたいなツッコミが非常にしづらくなってしまう。

文字ばかりのスライドにならないようにする

人の発表を聴いてる時に、文字ばかりのスライドだと聴いていてもなかなか頭に入ってこないだろう。論文をまとめる際にも、なるべく端的に、その論文で述べられていることの核となるトピックセンテンスの部分を抜き出して記述するべきである。図が入らず、文字だけのページになってしまった場合も、核となる部分を四角く囲む、論理展開を四角を矢印で結んだりすることで、視覚的に理解できるようにするべきである。

箇条書きの段は深くしすぎない

論文をスライドにまとめるので、書ける文章量は格段に少なくなる。そのため、箇条書きにしようと思うと、ついつい書いてあることをコピペして、文章量が多くなり、文字ばかりのスライドになってしまう。筆者はスライドを作る際は、箇条書きの段はせめて2段、3段目は本当に必要な補足情報があるなど、最低限にするよう心がけている。

良いスライドテンプレートを使う

スライドテンプレートはシンプルである方が良い、と筆者は思っている。背景にデザインが仕込まれたものなどでも良いのだが、文字、図がおけるスペースが小さくなってしまうことも多々ある。自分好みのテンプレートを使うことも重要だが、塩梅を考えよう。筆者は昔、背景が真っ黒に白抜き文字のテンプレートを使っていたが、視認性の悪さ、論文とスライドで図の白黒を反転しなければならない煩雑さから、白背景にするようにした。

デザイン・配置を気にする

文字が多くなりがちな論文発表において、なるべく四角で囲むなど視覚的効果を狙うべき、と述べた。そこで、その四角のデザイン(例えばサイズ、角の丸さなど)をなるべく揃えた方が良い。デザインはよくわからない、という人でも、とりあえず整列させる、中心を合わせる、そうしたことを意識するだけで、視覚的にスッキリさせることができる。

スライド中身編

タイトルページに書くべきこと

論文の場合、「どこで」「いつ」「誰が」発表した論文なのか、ということが非常に重要である。そのため、

  • 何のカンファレンス/ジャーナルで
  • いつ発表され
  • 誰が著者か、その所属はどこか

の情報を必ず入れるべきである。これらの情報がないと、その論文がどのくらいのレベルのもので、どういう想定読者なのか、ということがはっきりせず、前提を理解することが難しくなってしまうことがある。

最初のページに書くべきこと

最初のページでは、「この論文は何の分野で、何をしようとして、どのようなことをした論文なのか」を概観する。大概は論文のIntroductionにまとめてある内容で大丈夫だとは思うが、輪読発表を聴いている人に、前提知識をつらつら述べる前に、この論文の核の部分を伝えるようにしよう。前提知識が必要な部分は、適度に抽象化し、わかるように書く、あるいは発表時に口頭で補い、のちに詳しく説明する必要があれば、スライドを追加しても良いだろう。まずは全体像がつかめることが重要である。

以降のページに書くべきこと

論文は、提案されている仕組みをしっかり説明するために、多くのことが書かれている。当然、関係ない話は書かれていないはずなのだが、それらを全て解説するわけにはいかない。そこで、最初のページで概観を述べた後は、以下の部分に留意してまとめていくと良いだろう。

  • (必要ならば)前提とする知識
  • この論文の主眼とする問題とその定式化
  • この論文で提案される手法
  • 提案手法が問題を解けていることの証明(評価)

それぞれ各1Pを目安にまとめることを心がけよう。1Pの制約は厳しいので、適度に複数枚になっても良いが、そうすると長々とダレる発表になってしまうことも多い。そのため、制約のある中でどれだけ効率的に伝えることができるか、というのも一つのトレーニングであるため、意識すると良い。

図の引用と再作成

論文では、適度に図が入って解説されていることが多い。しかし、論文上の図は、紙面サイズの都合などで必ずしもそのままわかりやすい図であるとは限らない。そのため、図を引用する際は、その図がちゃんと自分で説明できるか、図で説明したいことが伝わるか、を考えなければならない。図がわかりにくければ、自分で理解した上で再作成するのも良い勉強になるだろう。

(補足)心構え編

なるべく早めに準備しよう

論文の輪読を始めるのは、学部生か、修士に入ったばかりの学生などが想定される。ありがちなパターンは、ギリギリに準備をしようとして、読み始めるとまず書いてあることが理解できない、結果スライド作成が間に合わない、論文をコピペしただけの自分で理解できていないスライドになってしまう、といったことだろう。「論文を読んで理解し、人に伝えられるように整理する」というのは、想像以上に時間と労力がかかる。だからこそ、トレーニングになるのであって、そこに「このぐらいでできるだろう」という目論見を持って臨むと痛い目を見ることがしばしばある。

先輩・教員は使い倒せ

一方でレーニンなのだから、自分で頑張ったけどわからない、となったら先輩・同期・教員に聞くべきである。教員・先輩はそのためにいるはずだし、教員・先輩自身もそうして教えられ、トレーニングを積んだ結果、そのスキル・知識を獲得しているのである。学生であれば、学費を払っている分は回収しなければ勿体無い。当然なにもしない、自分で理解する努力をしないでいきなり質問するのは門前払いになるだろうが、自分でここまで理解できました、ここがわかりません、としっかり「無知の知」をした上で尋ねれば、きっと答えてくれるはずである。

まとめ

論文の輪読、というのは基本的に論文を書く・発表のためのトレーニンである。自分で研究を進めて、発表をする際にも、どのような流れで発表すれば聴衆に伝わるか、を考えて発表を設計しなければならない。そのためにも、すでに発表されている(すでにストーリーが完成している)論文を読み、それをなぞるスライドを作ることで、論文とはどういうストーリーで書く・発表するべきものなのか、を学ぶことができる。最後に心構えでも書いたが、あくまでトレーニングであるためそのためのリソース(教員・先輩・資材)は十二分に活用することをオススメする。