chike0905の日記

何者かになりたい

Do I need blockchain?

 「それで、あなたはそのブロックチェーンやらで何がしたいの?」
当時婚約者だった彼女は自分に聞いた。世間では盛んに非中央集権だ、契約の自動化だと叫ばれるようになってきた時期だった。自分は数年ブロックチェーンの研究をしてきた中でも、耳の痛い質問だった。自分でもはっきりしてないのに、彼女にわかってもらえるはずがなかった。なぜこんな技術を研究しているのだろうか。ずっと頭の中にある問いの一つだ。

遡れば、自分は高校の頃からバンドをやっていて、将来の音楽配信、みたいなものをテーマにして大学を選択した。いわゆる学際学部で、音楽配信システムやら、音楽文化もあるし、そんなことを考えながら緩やかに学生生活を始めた。その中で情報技術ってものは面白いな。その程度の勢いで研究室に所属した。

研究室に所属してから、並行してバンド活動を始めた。バンド活動をしていると、お客さんが数人しかいないバンドでも、ライブを見たら感動するようなバンドがたくさんいた。そんな人たちと酒を飲み明かしながら、売れよう、売れるためには、みたいな話をよくしていた。友人のライブも何本も見に行った。それでも友人たちは解散していったし、その曲は忘れ去られる。自分たちも活動休止したりした。

そんな中で、ひょんなことからブロックチェーンちょっと面白そうだな、と思っていた。完全にただの興味だった。そうこうしているうちに、よく話す講師の方に「授業一コマBitcoinについて話してみないか?」と言われた。そのうち、研究室のボスから、3Dプリントとブロックチェーン、というざっくりしたネタをもらって卒論を書いていた。

バンドだって、3Dプリントだって同じだ、と気付くまで時間はそこまでかからなかった。個人が個人として作った作品の権利はどこまでどう保証したらいいのか。管理機関に預けることが最適解なのか、という問いが浮かび上がってきた。

自分は結局売れないバンドマンとしてバンドマン人生は終えた。だけども、その作品たちは、どこに向かうのだろうか。気に入ってくれてた人たちが、語り継いでくれればそれでいいのかもしれない。でも、ふと思うのは、化石みたいな形で、どこかに埋まっていて、いつの日か再発見されたりとか、そんなことがあったら面白いじゃないか。デジタルな地層、といった具合に、過去に存在したデータの上にどんどん積み重なっていくとか。まさにブロックチェーンだ。

「個人が個人として活動していた記録を残す。」
それがきっと自分がやりたいことの一つの形なんだろうな、と思う。その最適解がブロックチェーンなのか議論はあると思うが、自分は面白いと思うしやってみたい。そんなことを、数年前に問われた時の回答として、妻に話していた。

そんなある日、最近生まれた娘を抱きながら妻が言った
ブロックチェーン上に出生記録残すサービスあるみたいじゃない。やらないの?」
ブロックチェーンが記録の一形態として、社会に受け入れられるのは、もしかしたら近いかもしれない。

*1

*1:本稿は第2回BASEアライアンス・ユース・アワードに応募しようと思って執筆した文章の供養です。